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24時間の薬剤アクセスを誰が支えるのか

「事前処方」で本当に十分なのか。
在宅緩和ケアにおける薬剤供給の課題は、しばしば「24時間対応できる薬局が少ない」という話に矮小化される。

しかし本質はそこではない。
主治医には予測される症状変化に備えた事前処方やレスキューオーダーを行う責任がある。実際、在宅医療の現場では緊急時の対応を減らすため、あらかじめ必要な薬剤を準備する努力が続けられている。
それでもなお、夜間や休日の薬剤ニーズはゼロにならない。
誤嚥性肺炎、急性心不全、帯状疱疹、急激な疼痛増悪。患者の状態変化は必ずしも予測どおりには進まない。すべてを想定して薬剤を準備しようとすれば、膨大な種類の薬剤が必要になり、廃棄やコストの問題も生じる。保険適応の問題もある。現実的には限界がある。
事前準備を尽くしたうえで、なお発生するニーズに地域は応えられるのか。

現在、多くの地域では24時間の薬剤アクセスが一部の在宅特化薬局や大手チェーン薬局の善意に依存している。
制度上は薬局間連携が存在しても、実際に機能している地域はごくわずかだ。年間13万枚を超える処方箋と3万件の緊急事態に対応している悠翔会の経験からも同一法人内連携を除くと、体系的な薬局間連携が機能した実感は乏しい。
また、訪問看護事業者を対象とした調査では、「24時間対応体制あり」と掲げられている薬局の少なくない割合が、夜間に電話すらつながらない状況にあることが明らかにされている。
通院困難な在宅療養者(在宅医療利用者)は100万人に達する。

一方で高齢者の救急搬送は急増している。しかしその55%が軽症、在宅診断と薬剤アクセスで回避できる可能性がある。
薬剤師に問われているのは、調剤の正確性だけではない。
予測できない変化を前提とする在宅医療において、地域の薬剤供給を誰が支えるのか。
日本薬剤師会の答弁にたびたび出てくる「実態のない模範解答」を除けば、その答えは、まだ十分に示されていないと思う。

今日は日本緩和医療薬学会で特別講演の機会をいただきました。与えられたお題は「在宅緩和ケアの課題と薬剤師の役割」。いまさら「在宅医療とは何なのか」、そんなブリーフィングの必要のない優秀な薬剤師さん達を前に社会システムとしての課題を中心にお話しさせていただきました。
在宅医療の医学的介入の大部分が薬物療法。
だからこそ、在宅における24時間の薬剤アクセスにも、地域のインフラとしてのバックボーンが必要だと思うし、それは薬剤師が3人以上などのストラクチャーだけではなく、きちんとアウトカムで評価し、診療報酬上の差別化を強化していくべきなのではないかと思います。
同時に薬剤師・薬局だけに依存しない薬剤アクセスの緊急避難パスウェイについても検討すべきです。
医師と看護師はタスクシフトで相互の役割を共有し合うことができますが、現状「薬剤へのアクセス」は、薬剤師の専権業務、その地域の薬局・薬剤師だけに大きく依存する状況です。
訪問看護ステーションへの輸液の配備がようやく認められましたが、患者さんの不利益を最小化するための最適な妥協点はどこなのか、それぞれの職能団体が既得権益を守り合うだけの不毛な議論はそろそろ終わりにすべきだと思います。

佐々木淳

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