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医療を問い、生と死を見つめる。名郷先生が遺してくださった学びと、感謝を胸に。

EBMっていうのは、一番確率の高い治療法を選択することではない。
今年8月のコアカレッジで、名郷先生は声を絞り出すようにして伝えてくれました。
目の前の患者に、「エビデンス」をどう適用するのか。
そこには統計データだけで判断できない無数の変数がある。優先順位を考え、相互作用を考え、そしてコストを考え、何より治療が目指すべきアウトカムを考える。
EBMの重要性だけでなく、その運用の難しさを丁寧に教えてくださいました。
しかし僕にとっての名郷先生は、EBMの神様というよりは、哲学者でした。
Xで社会課題に対して「正義」を振りかざす僕に対し、名郷先生は、そもそも問いの存在そのものの意味を問われました。

僕の考えに大きな影響を与えたのは、『これからの「お看取り」を考える本』。
そこで先生は「死をことほぐ社会」という新しい死生観を提唱されています。
老いることや死を迎えることを単なる敗北や苦痛とするのではなく、「一生を全うしたという喜び」をもって受け止めよう、「寝たきり」状態は「寝ているだけで案外楽な毎日を送れている状態」と肯定的に捉えればよいのではないか、そして在宅医療においてもよく見られる「医療が限界ギリギリまで介入するお看取り」から、自然な終わりを喜ぶ「看取り」へと意識を変えることで、誰もが過度な恐れを抱かずに人生の最期を迎えられる社会を目指そう。
先生には、共同執筆の機会をいただいたり、凹んでいるときにさりげなくメッセージをいただいたり、いろいろな形で支えていただきました。
先生ご自身が、ご自分の人生の最終段階をどう受け止められていたのか、その答えをお聞きできるのは少し先になるかもしれませんが、最後の最後まで、世の中に発信を続けられた名郷先生への心からの感謝と哀悼の意を表したいと思います。

最後にご献本いただいたこの本は、子供向けのようで、とても本質的な内容が詰まっています。
特に後半の「人生の寄り道」は必読です。
名郷先生、改めてありがとうございました。

佐々木淳

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