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あなたの善意を、本当に必要な支援へつなげるために

災害支援を考えている医療・介護・福祉職の皆さまへ

被災地では、医療機関や介護施設だけでなく、地域の中で暮らす多くの方々が支援を必要としています。
特に人工呼吸器、酸素濃縮器など電気を必要とする医療機器を使用している方、要介護状態や障害のある方、独居高齢者などは、停電、断水、猛暑、道路障害、在宅サービスの中断によって短期間で生活の継続や健康状態の維持が困難になる可能性があります。
停電世帯も3万に上るとされています。エアコンが使用できない環境では、自宅も安全な環境ではありません。特に高齢者は、本人が暑さを訴えないまま状態悪化などに至ることがあります。医療機器のバッテリー、医薬品、食事や栄養、水分、排泄、体位交換、褥瘡予防など一つでも途切れれば生命の危機が生じます。
医療・介護・福祉の専門職が「現地のために何かしたい」と考えることは心強いことです。しかし、災害支援では、支援者の善意や専門性だけでなく地域全体の支援計画に接続することが極めて重要です。

災害現場には、都道府県の保健医療福祉調整本部、保健所、市町村、医師会、それに連動する地域の医療介護福祉事業所と専門職がいます。さらに災害フェイズに応じてDMAT、JMAT、PCAT、DPAT、DHEAT、DWAT、DC-CATなどさまざまな専門職による支援チームが活動します。
それぞれが個別に動くと、支援提供体制に地域ごと・施設ごとのムラが生じます。また、同じ内容の聞き取りが繰り返され、現地職員や被災者の負担が増えること、支援者が把握した患者情報やニーズが地域の支援体制に引き継がれないこともあります。

日本医師会のJMAT要綱も、被災地外からの派遣は被災地の都道府県医師会からの要請に基づくこと、現地のコーディネート機能下で活動すること、自己完結型で派遣することを原則としています。これは災害支援の基本原則で、例外はありません。https://www.med.or.jp/…/saigai/jmatyoukou20180901.pdf

さらに、国の制度上は都道府県の保健医療福祉調整本部と保健所が、医療・保健・介護・福祉の支援チームを総合調整する。2026年3月の通知でも、DMAT、DWAT、保健医療福祉活動チーム、NPO等を含め、行政・団体・事業者間で役割を共有し、情報を一元化することが求められています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_71340.html…

また熊本県自身には2016年熊本地震の経験を踏まえて作成された「熊本県災害時医療救護マニュアル 第三版」があります。外部支援者は独自ルールを持ち込むのではなく、まず熊本県の既存体制に接続すべきです。
https://www.pref.kumamoto.jp/upl…/attachment/306570.pdf…

じっとしていられない方もいると思いますが、「とりあえず現地に向かう」前に、まずは所属組織、職能団体、学会、医師会、自治体などを通じて、正式な派遣・登録・調整のルートを確認してください。現地では、指定された活動場所、役割、指揮命令系統のもとで活動し、日々の活動内容、把握したニーズ、未解決の課題を定められた方法で共有することが求められます。

また、災害支援の基本は支援者自身が被災地の資源を消費しない「自己完結」です。交通手段、宿泊、食事、飲料水、通信手段、燃料、衛生用品、必要な装備について、可能な限り自ら準備する必要があります。安全が確保できない状況での活動や、十分な引き継ぎ先がないまま新たな診療や介入を始めることも避けなければなりません。

被災地でのSNS投稿についても慎重な対応が必要です。善意の情報発信であっても、被災者の尊厳やプライバシーを損なう可能性があります。混乱の中で、本人同意も十分な考慮に基づく判断でない場合が少なくありません。また、統制されない情報発信が被災者や支援者を混乱させ、個々や地域全体にとっての最善の選択を妨げることもあります。
災害時の外部支援者の役割は、地域の医療・介護・福祉を置き換えることではありません。疲弊している現地の専門職を支え、地域の仕組みが再び自立して動けるようにすることです。支援を受けた方が、その後も継続した医療やケアにつながるよう、記録、情報共有、引き継ぎ、撤収までを含めて計画する必要があります。

これから支援に入る方には、まずはスフィア基準など国際的な人道支援の原則や、PCATをはじめとする災害支援研修・マニュアルを事前に確認してください。
https://jqan.info/…/2019/10/spherehandbook2018_jpn_web.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/…/4/39_50/_article/-char/ja

災害支援において重要なのは「何ができるか」でなく、「今、どのような役割が求められているか」。一人ひとりの専門性を、個別の善意で終わらせず、組織された支援の力に変えることです。
支援に向かう前の登録、研修、調整にいら立ちを感じる人もいると思います。しかし、これらはあなたの行動を遅らせるための手続きではありません。限られた人員と物資を、本当に必要としている人に、ムラなく確実に届けるための準備です。
被災者の命と生活を守るために、現地の声を聞き、支援全体の一員として、それぞれに求められた役割を果たしていくことが重要です。
10年前の熊本地震において、医療法人社団悠翔会は首都圏の善意の方々から、被災地が必要とする物資を取りまとめ、地域支援拠点となっていた玉名地域保険医療センター(くまもと県北病院)に空輸しました。また現地からの依頼に応じて歯科チームが現地に入り、避難所での口腔ケアの支援にあたりました。
災害支援の仕組みはこの10年で大きく進化しており、今回、現時点ではこのような形の支援は必要ないと判断しています。

まだ被害の全容は明らかになっていませんが、前回の熊本地震では災害直接死50人に対して、災害関連死は220人と犠牲者の8割以上を占めました。そしてその78%が70歳以上の高齢者でした。関連死亡者の87%に基礎疾患あり、死因の多くが呼吸器系・循環器系の基礎疾患の悪化によるものでした。

今回は季節が夏ということもあり、停電等によって状況はさらに過酷になる可能性があります。自宅避難を続けている、あるいは避難所で過ごす高齢者(特に基礎疾患のある人、要介護高齢者)に対しては十分な配慮が必要です。そして地域BCPにおいて、このような場で役割を発揮することが求められているのが、地域で活躍する多職種の在宅診療チームです。
被災地の在宅医が地域支援に専念できるよう、地域の医療機関の日常診療をバックアップするためのHoMATという仕組みがあります。被災した際の受援拠点・後方支援拠点としての経験またはキャパシティのある在宅医療機関・在宅医が登録しています。何かしたい、しかし災害支援について必要な研修や教育を受けていない、そんな医師はこちらに登録し、被災地を間接支援するという選択があります。
https://homat.net

また、公的支援チームに属していない看護・介護・福祉職は、DC-CATにジョインするという選択があります。悠翔会も能登震災の支援においては、こちらに参加させていただきました。
ここでもまずは災害支援の基本を学ぶところから始まります。ムラのない被災地支援を通じて災害関連死を減らし、将来的に地域のケアの自立性を復興するためには、行政と連動した包括的・統合的な支援提供体制が必要です。DC-CATはそのための効果的な枠組みです。今回、DC-CATが稼働するかは確認が必要ですが、こちらをフォローしていただくのもよいと思います。
https://rach-jp.net/category/dc-cat
https://docs.google.com/…/1FAIpQLSejdZzj7g7zs8…/viewform

あなたの善意を被災地に届けるために。
いまできるのは、被災地の負担を増やさないこと。そして、必要なタイミングで必要な支援を迅速に届けること。
いざというときに力を発揮できるよう、今はそれぞれで然るべき準備を進めましょう。

佐々木淳

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