Hospital/Hospice at Home in Nerima ― 在宅医にしかできないこと
在宅医として仕事をしながら日々思うのは、そもそも在宅療養支援に「医師」はどこまで必要なのか、ということ。
日本には、生活を支える優秀な専門職がすでに存在する。
残念ながら医師の存在が、彼らの活躍を制限し、生活の質を低下させているケースは多々見受けられる。
では、医師が関与することで、生活の質が向上する、人生の選択肢が増える、可能性が拡大するケースとは、いったいどういう状況なのだろうか。
1つは急性期への対応。
病院に入院するか、すべてを諦めて看取りか、ではなく、自宅できちんと急性期治療を行うこと。
保険診療における医者の仕事は診断と治療だ。その役割がもっとも強く求められるのは、急性期であるはずだ。
日本では「ときどき入院・ほぼ在宅」と誰のためだかわからないスローガンの元、「なにかあったら救急車」「なにかあったら入院」みたいな感じの在宅医療がまだまだ多いようだが、急変時・増悪時に病院に搬送するなら、そもそも在宅医など必要ない。
処方だけならオンラインでもできるし、急変・増悪の判断なら看護師でも、家族でも、本人でもできる。
日本の在宅医療は、もっと急性期をちゃんとやらなければならない。すくなくとも「医師」であるならば。
2つ目は退院支援、特にポストアキュートの受け入れ。
入院患者さん、「もう大丈夫だね」というレベルまで診てほしい、と家族は思う。ケアマネさんも思うかもしれない。
だけど、特に高齢者は入院するとどんどん弱っていく。食べられなくなり、歩けなくなり、認知機能も低下して、自宅に帰れなくなる人も多い。
がんの患者さんは治療をしていないのであれば、日々、全身状態は悪化していく。今日がいちばんいい状態、明日は、明後日は、今日よりも少しずつ弱っていく。もうすこし元気になったらね、なんて言っているうちに、天国に行かれてしまう。
心不全や呼吸不全は、病院での集中治療で安定状態を取り戻すことができる人もいる。しかし、入院が長期化すれば合併症が生じやすいし、いずれ非代償期がやってくる。
まだ不安定です。在宅で診るのは難しい。そんな判断するだけなら在宅医はやめたほうがいい。帰りたいと望むその人を「帰せるか」を判断するのではなく「どうすれば帰れるか」を考えるのが在宅医の仕事。
不安定な状態でも、こうすれば大丈夫、覚悟を決めれば大丈夫、生活を支える専門職が安心して受け入れられる。そんな状況を作るのも医師の役割。
加えて重要なのが、再入院を防ぐこと。
そして、入院による身体機能・認知機能の低下(入院関連機能障害)からの回復を支援すること。
弱っていくのをただ見守るだけならだれでもできる。
回復可能性をしっかりアセスメントし、最善の支援で、その人の残された人生の可能性を最大化する。
特に栄養やリハビリに対する関心はもっと持ってもらったほうがいいと思う。(特に無関心が深刻なのは医師だが)
3つ目は緩和医療。
サポーティブケア、ホスピスケアとしての支援体制の主力は看護師さんを中心としたコメディカルの方々。
医師の仕事は、患者の全人的苦痛を要因別にブレイクダウンし、医師による医行為、「緩和治療」が必要な領域でしっかりと責任を果たすこと。
もちろん治療の有無による生活への影響、人生への影響もきちんとアセスメントしながら、本人、家族、多職種と病状経過の見通しを共有し、病状変化時の対応を事前に準備し、特定の誰かに特別な負荷がかからないようにチームのコーディネートを行う。
痛くて、苦しくて、家族も辛くて、だから自宅は無理です、みたいな状況を作らないこと。
そして、これらの医師の役割を在宅で発揮していくためには、この最適な役割分担を実現するための地域単位のチーム力が絶対に不可欠。
目的・目標を共有し、フラットにこまめにコミュニケーションをとりながら、その人の「真のニーズ」を満たすために、それぞれが、それぞれの強みを最大限発揮できるチーム。
練馬では、そんなボトムアップの取り組みが着々と重ねられている。
【Hospital/Hospice at Home in Nerimaを実装する!】
来週の水曜日(2026年6月24日) 19時~21時30分、ココネリホール(練馬駅近く)で、在宅医療のシンポジウム。
パネリストは地元練馬の超強力なメンバー。僕も座長として参加させていただくことになっているみたいです。
参加無料です。
ぜひ、地域の専門職同士や住民とのつながりを強め、これからの理想の在宅医療・在宅ケアについて自分たちの理想をぶつけ合ってみませんか?
まだ少し参加枠が残っているようです。
参加登録はこちらから
医療機関・訪問看護ステーション・ケアマネジャー等向け勉強会
「Hospital/Hospice at Home in Nerimaを実装する」の参加申込フォーム
佐々木淳
