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人を信じ、力を引き出す在宅医療のマネジメント。台湾・HOSOで振り返る、組織づくりの試行錯誤。

在宅医療機関のマネジメントの難しさ。
開設から7年目にして医師6名、スタッフ75人を擁する総合在宅療養支援拠点。訪問薬局や訪問看護・介護サービスまで一元的に提供する。

台湾3日目、午後は黄先生の運営するHOSOクリニックへ。
午前中に訪問した員郭病院が垂直統合モデルとすると、ここは水平統合モデルだ。
医師6名というと、悠翔会でいえば5年目くらい。クリニックは4ヶ所目を作ったところ。それでも、まだ組織化・仕組み化がされておらず、休日夜間対応も僕一人でやっていた頃だ。

実はこのタイミングは悠翔会にとってターニングポイントでもあった。
増えつづけるスタッフをマネジメントするために、僕らはルールを作り始めた。患者の情報共有を全面的にシステム化した。
一見、うまくいったように見えた。
しかし、これまで自分の頭で考え、自分で判断していたスタッフたちは、「標準化」の名の下に、ルールに基づいてケアを行うようになった。
そして現場からユーモアとサプライズが消えた。
患者の笑顔よりもミスしないことを求められるようになったスタッフや、創業時からサポートしてくれていたパートナーも柔軟性を失った硬直的な診療に徐々に離れて行った。
低下し続ける適応性パフォーマンス。
どうすればこの状況を打開できるのか。
思い切って、僕は自分の関与を減らした。
各クリニックの院長に権限を委譲した。休日夜間に一人で出しゃばるのをやめた。MS法人と本部を作って、経営の細かな作業を全て外注した。
患者の真のニーズに一人ひとりが向き合う。
自分たちを「人を幸せにするための人間集団」と定義し直し、訪問診療は目的ではなく、幸せに暮らし続けるための手段の一つであると定義し直し、そして、チームの一人ひとりの力を信じた。
もちろん、すべてがうまくいっているわけではない。
たけど、僕が絶対君主をしていた時代よりは、スタッフのみんなも、患者さんたちも幸せに暮らせているはずだと思う。
院長たちは、基本理念とビジョンを中心に、チームを育て、そして地域と向き合ってくれている。診療力の強化も、拠点の拡大や移転や、分院の開設まで、自律的に考え、主体的にクリニックを動かしてくれている。

HOSOチームを見ながら、自分の20年間の経営者としての試行錯誤を振り返る。
時代も社会制度も違うので、僕らの体験がそのままお役にたてるかどうかはわからないけど、在宅医療やケアは「人が人を支える」仕事。だからこそ、人こそが価値の中核。優れた専門職が、その能力を最大限に発揮できる環境を整えることこそがマネジメントの要諦である、というのは普遍的であるはず。そして、重要なのが内発的なモチベーション。それを支えるための役割設計や評価の仕組み。
黄先生のチームと午後半日、クリニックの運営や経営、システム開発やロジスティクスについて意見交換した。

昨夜は夕食をご一緒しながら、人的資源マネジメントについても議論した。
マネジメントは奥が深すぎて、どれだけ勉強しても、そして勉強するだけでは十分ではない。誰かが答えを教えてくれるわけでもないし、早期の方針変更が奏功することもあれば、粘り勝ちすることもある。そして医療の場合には、特に利益と理想のバランスも求められる。
この複雑な連立方程式に向き合い続けることを面白いと思えるか。
黄先生にはちょっと僕と似た匂いを感じる。

佐々木淳

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