『もう歳だから』が認知症リスクを高める?」
面白い論文見つけたので共有します。
「もう歳だから仕方ない」
その思い込み自体が、老化(認知症リスク)を加速するかも、という話です。
アルツハイマー病の最大の遺伝的リスク因子は「APOE ε4」 。
これが1つあるとアルツハイマー病リスクは約2〜3倍、2つあると約8〜12倍に高まるとされています。
しかし、APOE ε4を保有していても、認知症を発症しない人もいます。
その違いは何なのか。
イェール大学のLevy先生たちは、60歳以上で認知症のない4,765人を追跡調査(前向きコホート研究(Health and Retirement Study))、加齢に対する考え方(Age Beliefs)と認知症発症の関係を調べました。
その結果、加齢を前向きに捉えていた人は、認知症を発症しにくいことが示されました。これは年齢や教育歴、糖尿病、心血管疾患、ベースラインの認知機能など、認知症の発症に影響しうる要素を調整した後でも変わりませんでした。
特に興味深いのは、APOE ε4の遺伝的リスク要因のある人では、前向きな加齢観を持つ人は、否定的な加齢観を持つ人より認知症発症リスクが半減(49.8%)していたこと。4年間の追跡では、認知症発症率は2.7% vs 6.1%でした。
もちろん、この結果は「前向きに考えれば認知症が半分になる」という単純なものではありません。あくまで観察研究であり、因果関係は証明できていない。そもそもポジティブな人は、活動性や社会参加、友達の数、性格など、ここでは測定しきれていない要因が影響している可能性もある。
それでも、この研究が示唆することは重要だと思います。
遺伝子は変えられない。
だけど、加齢に対する考え方は変えられるし、それによって行動も変わるかもしれない。
それによって認知症のリスクを、大幅に下げることができるかもしれない。
認知症予防には運動や食事、睡眠などが注目されていますが、「もう歳だから」と諦めない社会をつくることが実はもっとも効果的なポピュレーションアプローチなのかもしれない。
そんなことを思いました。
ちなみにLevy先生は「Age stereotype theory」をずっと研究してきた方。
つまり社会が高齢者に向ける固定観念(年齢差別)を本人が内面化し、それがストレス反応や自己効力感、健康行動、生理機能を介して健康や寿命に影響するというモデル。
彼女の研究では、ネガティブな加齢観は、ストレスホルモン上昇、身体活動低下、リハビリ参加率低下、心血管疾患増加、死亡率増加などとも関連している。
つまり「どう歳をとると思っているか」が実際の行動を変え、その積み重ねが健康に影響するということになる。
今回は、超強力な認知症リスク遺伝子があったとしても、それにポジティブな加齢感でそれに打ち勝ちうる、ということを示したという意味では、認知症含む「病気」は、遺伝子より生活や行動の影響が大きいということが言えそうだし、なにより生活や行動に影響を与えうる、我々の「気の持ちよう」が重要だ、ということになる。
「病は気から」って昔の人はよく言ったものです。
論文へのリンクはこちら。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29414991
今日はランチタイムにふるさと納税で送っていただいたスイカをみんなで美味しくいただきました。
熊本のスイカを買えば、被災地支援になりますね。物流が安定したらオーダーしたいと思います。
佐々木淳
