睡眠時間と寿命、その結果をどう読み解くか
いろんな意味で示唆に富む研究です。
睡眠時間の長さと死亡のリスクの関連を示唆する研究はいくつもありますが、では「寝すぎ」の人が睡眠時間を削れば長生きできるか、というと、必ずしもそういうわけでもないと思います。
なぜなら、臥床時間が長い人は、長く起きていられない人=もともと健康上の問題を抱えている可能性があるからです。
問題は病気であって、病気のために臥床時間が長いこと、ではないかもしれません。
かつて、アルコールは少しは飲んだほうが健康によい、と信じられていました。全く飲まない人よりも、少し飲む人のほうが死亡率が低かったからです。
しかし、これも全く飲まない人の中に、病気のために飲めない、飲んではいけない人が含まれていたことで生じたミスリードでした。
「お酒を飲まない」と「お酒を飲めないくらい具合が悪い」は意味が違います。病気の人を除外した研究を通じて、いまではアルコールに「適量はない」(飲まない方が健康には良い)ということがコンセンサスになっています。
観察研究の結果を見る時は、そこに見える「関係」が、真の因果関係なのか、慎重に判断する必要があります。特に食事・栄養や睡眠、運動など、ライフスタイルに関する研究は観察研究が多く、短絡的に介入する前に、その研究のデザインや限界、そしてその人の「個別性」を意識する必要があると思います。
佐々木淳
年寄りは昼寝をする人が多いのですが、昼寝の時間と回数がその後の全死因死亡率とどのように関係するのでしょうか?アメリカの研究グループがこれについて調査をしました(この場合、昼寝とは通常の睡眠時間以外に午前9時から夕方7時までの間にとる追加睡眠のことです)。
対象はイリノイ州北部に住む高齢者1,338名(81.4±7.39歳、女性76%)で、平均8.3年間、最長19年間にわたって調査が行われました。
その結果、昼寝の時間が長い人や昼寝頻度の高い人は、有意に死亡率が高くなる傾向がありました(細かく見ると、昼寝時間が1時間増えると死亡の調整ハザード比は1.13、昼寝回数が1回増えると調整ハザード比は1.07、でした)。また、午前中に昼寝する人は午後の早い時間に昼寝をする人に比べて死亡リスクが高くなっていました(調整ハザード比1.30)。
どうも、一度起きた後、朝のうちに再び寝たり、昼寝時間が長くなったりするのは、良くないようです。これまでの報告を見ると、1時間以内の短い昼寝はあまり問題がないようですが、それが長くなったり、日中何度にもなったりというのは、生活リズムが乱れるだけでなく、運動不足を介して心肺能力の低下につながり、フレイルになりやすくなり、頭脳の力も低下にもつながるのだと思います。
昼寝が長すぎると、夜の眠りの質が低下します。すると、昼間眠くなって昼寝をするということになってしまいます。昼寝はする時には一日に1時間以内、1回以内というのがよさそうです。
Objectively Measured Daytime Napping Patterns and All-Cause Mortality in Older Adults