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安全を守ることが、患者さんの不利益になっていないか。

第12回日本医療安全学会学術総会に参加しました。
特別講演という大役を頂戴し、「超高齢化に伴い、リスクの考え方をシフトさせていくべき」というお話をさせていただきました。
特に急性期病院においては、入院中の事故のリスクを最小化することにフォーカスされることが多いですが、入院中のリスクヘッジが患者にとって新たなリスクの種になることは少なくありません。例えば、誤嚥のリスクを懸念して2週間絶食をした場合、患者は退院後、摂食嚥下機能の低下と誤嚥性肺炎のより高いリスクにさらされることになります。トータルで見たときに、それが本当に患者にとってのリスクヘッジになっているのか、誰のための安全管理なのか。そのような視点を持つべきだと提案しました。

ただ、特に急性期病院において患者の利益にフォーカスできない大きな要因の一つが、訴訟リスクです。近年では、高齢者の誤嚥や転倒など、いわゆる生活上不可避なリスクに対して、それを医療上のミス、あるいは安全管理上のミスとして家族から訴訟されることが相次いでいます。また、司法もそのような家族の訴えを受け入れ、医療者側や病院に責任を求める判例も発生しています。
高齢者だから安全管理をおろそかにしてよいという話ではありません。高齢者は、自宅にいても施設にいても病院にいても、転倒や誤嚥、窒息など、一定のリスクとともに暮らしています。それがたまたま病院で生じたときに、直ちに医療事故として訴えられることは避けねばなりません。さもなければ、すべての入院患者が食事を止められ、ベッドの上に拘束されることになってしまいます。

1. 誰のための安全管理なのか
2. どこまで、どのような安全管理を行うべきなのか
3. その安全管理による不利益をどのように考えるのか

一般急性期病棟の入院患者の大部分が高齢者、しかも3分の2が75歳以上、3分の1が85歳以上という「超高齢医療」において、急性期病院での入院治療における安全管理のあり方について、社会のコンセンサスづくりが問われていると思います。
まずは、医療と司法の対話を、そして歳をとって弱って死んでいくという人生の全体像に対する社会全体の理解の共有を。
ACPの推進も良いですが、それ以前にまずはやらなければならないことがあるように思います。  
貴重な機会を頂戴しました大会長の辰巳先生、そして座長の轟さん、関係者の皆様、本当にありがとうございました。

これから東京に戻ります。
50過ぎての機内泊(しかもLCC)は少し疲れましたが、素敵な先生方とのディスカッションを通じてエネルギーをいただけたような気がします。

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佐々木淳

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