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介護保険制度は、もう限界に近づいているのかもしれない

人口減少地域における介護保険制度の限界。
キーは高齢者医療制度と介護保険の財源の統合ではないか。

上海滞在中に、北海道新聞の連載「限界地域医療」にコメントを掲載いただいた。
大都市部以外では人口減少が進み、医療機関や介護事業所がさらに減少することが予想される将来を見据え、医療・介護制度をどのように見直せばよいのか。

日本が直面する「人口減少×高齢化×地域偏在」に対し、現行の「市町村単位で介護保険を回す」ことは中長期的にはかなり厳しくなる、というか、すでに厳しくなりつつある。介護保険の中でもベーシックサービスであるはずの訪問介護事業所すら存在しない基礎自治体も増えてきている。
介護保険制度の、地域密着、住民主体などの思想は素晴らしいと思う。
しかし現状、人口減少×要介護者増加、医療介護複合ニーズの増加、小規模自治体の行政能力低下、介護人材不足・偏在などによって、「小さな保険プールでリスクを引き受ける」こと自体の限界が見え始めていると思う。

特に過疎地では「保険料を払える人が減る一方、給付対象だけ増える」という保険制度としてかなり厳しい状況になっている。
この問題を解決するための1つの方法として、医療・介護財源の統合(特に後期高齢者領域)を1つの方策として検討すべきではないか。加えて、介護保険運営主体の広域化(市町村→都道府県)についても同時に検討を進めるべきではないか。
医療(特に後期高齢者医療)と介護の財源一元化のメリットは大きい。
まずは医療と介護を一体化できる。

現状、医療は二次医療圏・都道府県単位、介護は市町村単位。なので医療計画と介護計画がずれてしまう。しかし、特に回復期(包括期)、在宅移行、特定施設・特養・老健、終末期ケアなどは一体設計した方が間違いなく合理的だ。
現状は医療保険、介護保険、障害福祉、地域包括支援が別財布。そのため「医療費を減らすために介護へ押し出す」、「介護施設が医療依存度の高い患者を敬遠する」、「病院が退院を急ぐ・または退院させない」などの制度間のコスト押し付け合いや収入の奪い合いも起きやすい。財源と地域単位を一元化すれば医療介護福祉を全体最適化しやすくなるのではないか。地域医療構想とも整合しやすい。
高齢者複合ニーズにも合理的に対応できるようになる。
超高齢者の課題は医療、介護に留まらず、独居・孤立、認知症、生活能力低下、フレイルなど多分野に重複する。現状の制度は「病気」と「生活」を区分せざるを得ないが、実際には、脱水、転倒、服薬管理不良、低栄養、頻回な救急要請などは、本来医療というより生活機能問題。財源と地域単位を統合することで「治療的アプローチ」から「生活的アプローチ」への転換を促しやすくなるのではないか。
そして最大の利点は、過疎地への財源再分配がやりやすくなること。
現状、市町村ごとに高齢化率・所得水準・人口規模・介護需要が大きく異なる。しかし、保険プールを広域化できれば、若年人口の多い都市部・財政力の強い地域と、限界集落・中山間地域とで「財布」を共有できるので再分配がしやすくなる。保険の本来機能である「リスク共有」に近づくのではないか。

行政コストも削減できる。
小規模自治体がそれぞれ介護認定、給付管理、監査、事業所指導などの機能を持つのは本当に非効率だと思う。逆に都道府県の中には政令指定都市よりも人口の少ないところもある。都道府県単位化できれば、自治体規模に応じた機能集約が容易になるし、DX、審査支払、データ連携、人材集約なども進めやすくなる。

もちろんデメリットやリスクもある。
財源共有により、都市部と地方の対立が生じるかもしれない。
特に若年人口の多い自治体から「なぜ自分たちの保険料が地方維持に使われるのか」という反発が出るかもしれない。地方と都会の地域間対立が深刻化するかもしれない(しかし、実際には現在も税で再分配されている。財源統合すると、再分配が可視化され、特に入院医療などについては逆に適正化が進むかもしれない)。
あるいは政治力の強い医療に、介護や福祉の予算が削られるリスクもあるかもしれない。
地域の健康管理の責任が「広域化」することで、市区町村に対する介護予防やフレイル対策・地域包括ケアなどを頑張るインセンティブが薄まってしまうかもしれない。
そして何より、現状維持バイアスの多い日本で、これほどの大きな調整を推進するためには相当の政治的エネルギーも必要とされると思う。

ただ、いまの介護保険制度の「制度運営」そのものが、もはや限界に近づいているのではないか、という感じはどうしても否めない。
それはサービス提供の持続可能性の確保以前の問題であるとも思う。
保険が守るべきものは何なのか。
そもそも保険とは何なのか。
保険制度の未熟な国を見てきたばかりだからそう思うのかもしれないが、まずはこのあたりに立ち返る必要があるのではないかとも思う。

佐々木淳

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