あの夏、ドアの向こうにあった『医療崩壊』
いまからちょうど5年前。
多くの人には記憶の彼方かもしれませんが、東京は新型コロナパンデミックで医療崩壊していました。
悠翔会は東京都医師会から委託を受け、いわゆるコロナ往診に対応していましたが、保健所からの依頼件数が多く、既存戦力で対応しきれなくなり、全国のお医者さんに支援を呼びかけたのが今日でした。
2021年8月15日。
東京だけでも新型コロナ在宅療養者が3万5千人を超え、うち1万4千人が入院・療養等調整中。中等症以上は原則入院となっていましたが、現実には、多くの中等症Ⅱ以上の方が自宅で入院待機でした。
動脈血酸素飽和度90%で3日間苦しんでいた一人暮らしの人、強い消化器症状で5日間食事ができないままに赤ちゃんに授乳を続けていた人、酸素飽和度が90%未満で救急要請、しかし搬送先が見つからず救急車内の酸素投与でしのぎながら、結局在宅酸素で自宅療養を続けている人、家族全員がコロナに感染し孤立している一家・・・
中等症以上は原則入院となっていましたが、実際には酸素飽和度が80%未満でも入院できないケースも少なくありませんでした。私たちが対応したケースの75%は入院適応でしたが、24時間以内に入院できた人はごくわずか。多くは自宅で酸素吸入とステロイド投与でしのぎました。そしてなんとか入院につながったものの、残念ながら病院で亡くなられた方もおられました。
パンデミックは通常の災害と違って街は無傷。
感染しなかった人の日常は、いつもと変わりなかったはずです。
でもあの夏、東京の住宅街のドアの向こうには「医療崩壊」という瓦礫の下に埋まった3.5万人の被災者がいました。
ワクチンは間違いなくゲームチェンジャーでした。
ワクチン接種を終えていた高齢者の多くは第4波・第5波での感染を逃れることができました。新型コロナ肺炎で重症化していたのは、ワクチン接種が間に合わなかった若年~中年世代の人たちだったのです。
その後も、ワクチン接種者とそうでない人の間には、統計解析を待つまでもない明らかな重症化率・入院率・死亡率の著しい差が存在していました。
それは、今でも、少なくとも要介護高齢者や基礎疾患のある人たちにおいては事実ですし、その安全性については多数の信頼できる医学的検証も行われています。
いまだに「ターボ癌が急増している」とフェイクニュースを流し、世間の注目を集めようとしている森田氏には、もはや哀れという感想しかありませんが、彼の欺瞞によって少なからぬ人が健康上の不利益を被っていることはおそらく間違いなく、僕も不愉快なのでしばらくミュートしていたものの、これ以上「表現の自由」として看過していいものではないと思います。
医者の肩書で発信するなら、それは医療倫理の4つの基本原則と検証された科学的事実に基づいたものであるべきだ。あなたはジャーナリストではない。フィクション作家だ。あなたの垂れ流す虚偽の情報に、フィクションである旨を明記せよ。それをしないなら、本を出す前に査読論文を出すべきではないか。
ちなみに僕はたぶん森田氏の10倍以上、がん患者さんに関わらせていただいていると思うが、「ターボ癌」などというものと遭遇したことは1度もない。鹿児島の一部地域の風土病なのか? もしそんなに多発しているのであれば、ぜひ症例報告くらいはしてほしい。
佐々木淳
