パラダイムシフトの、その先へ。
第8回・日本在宅医療連合学会@札幌、大会長の大友先生、実行委員の皆様、そしてご参加の皆様、お疲れ様でした。パラダイムシフトをパラダイムシフトする次世代の在宅医療。大会テーマを体現した素晴らしい内容でした。貴重な学びと交流の場をありがとうございました!
今日は自分自身で企画した2つのシンポジウム、そして大井先生の渾身の食支援のセッションにパネリストとして登壇させていただき、その間ITRI(台湾工業技術院)の皆様と来年度大会における協働の打ち合わせなど、一会員としても完全燃焼しました。悠翔会からも20人以上のメンバーが参加、それぞれ座長や演者として大活躍してくれました。
2つの企画シンポジウムは時間配分以外の事前打ち合わせなし。いずれも予定調和のないディスカッションでしたが、どちらも「共創」を実感できる素晴らしい内容になったと思います。期待を大きく超えるプレゼンとコメントをしてくださった8人のパネリスト・共同座長の皆様、ディスカッションにジョインしてくださった皆様、そしてこの機会を頂戴しました実行委員会の皆様、本当にありがとうございました。
座長としても企画者としても改めて感謝申し上げます。
2つ目の企画シンポジウムは「未来の在宅医療」がテーマでした。
パネリスト・共同座長の4名(小坂・戸原・安池・山岸)は来年の第9回・日本在宅医療連合学会@東京のコアメンバーでもあります。
いまから5年後、10年後。
在宅医療は今とは全く違うものになっていると思います。
来年の大会は、未来の在宅医療の具体的なイメージを共有する場にしたいと思っています。
超高齢化(重老齢化)の進行で、入院患者における高齢者の割合が急増、特に高齢者の中での高齢化が進み、85歳以上の入院ニーズ・救急ニーズが急増するとされています。
しかし、高齢者救急の過半数は入院適応外、また入院適応とされた場合でもフレイル高齢者には入院毒性も強く、入院外急性期治療の重要性は日本以外の多くの国でクローズアップされ、政策的にも強力に推進されています。
一方で、国民は社会保障費を負担に感じ始め、高齢者の自己負担の増加も検討されています。自己負担の重さを理由に訪問診療を敬遠する世帯は今より増えるかもしれません。ただし、入院医療費の負担もより大きくなるかもしれません。
診療報酬は徐々に機能評価・アウトカムベースにシフト、在宅医療にもインフラとしての高機能化と持続可能性を要求する一方、国は急性期病床の大幅削減方針を隠していません。これまで高齢者救急で対応していた患者ニーズに在宅で応えることを求められるようになるかもしれません。
昨年12月は医療法が改正され、オンライン診療の全面解禁とともにDtoPwithNなどの形態にも診療報酬が付きました。在宅診断・治療デバイスや遠隔モニタリングなどのテクノロジーも加速度的に進化しています。これらによって在宅医療の診療範囲は、不安定期・急性期・高侵襲領域に安全に拡大していくかもしれません。
他の先進国では在宅透析、在宅化学療法、在宅周産期ケア・新生児ケアを医療システムとして有する国があります。大腿骨頚部骨折したフレイル高齢者を術後3日で自宅退院させ在宅で術後管理する国もあります。肺炎や尿路感染などの在宅急性期治療をDPCで評価する国もあります。そこに患者のニーズがあるのであれば、我々もやれない理由はありません。
一方で、日本のように「在宅プライマリケア」が仕組み化されている国はあまりありません。多くの国では慢性期は「ケア」の仕事とされ、医療職の主体は看護師。医師は後方支援に留まり往診や訪問診療という診療形態は実は相当にレア。しかも医師が24時間在宅対応する国はほとんどありません。
在宅医療と一言にいっても、実は非常に多様なフェイズ・多様な側面があることがわかります。
そこで、来年度大会では、在宅医療を「在宅プライマリケア」「在宅急性期治療」「移行期・回復期支援」「ホスピスケア・緩和ケア」の4つのカテゴリに大きく分割し、変わりゆく社会のニーズの中で、私たちがどのような役割を患者や地域、そして保険者から期待されているのか、患者側の目線で考えてみたいと思います。
日々保険診療をしていると、いつの間にか「患者中心」ではなく、「制度中心」の在宅医療になってしまいますが、現在の制度が患者や地域にとって最適なものであるとは限りません。
そこでこの思考の壁を壊すため、第9回大会では、国際大会を併催し、日本以外の国々の在宅医療の取り組みからも学びたいと思います。
在宅入院の制度化で先行するフランスやオーストラリア、価値観を共有しつつ急性期から在宅医療の構築を始めた台湾や韓国、パイロット事業を重ねながら計画的に制度化を進めるシンガポール、コロナ禍を気に一気に在宅入院が拡がった米国、公的保険のカバレジの少ないインドにおける在宅入院・・さまざまな国や地域、特にEBPMとして在宅医療の整備を進める先進諸国の取り組みから日本が学べることは多くあるはずです。
同時にACSCsとしてのフレイル高齢者に対する在宅プライマリケア、多職種による24時間対応、そして安定期から急性期、移行期、終末期まで同一診療チームが継続的に関われる点においては、日本の在宅医療の優位性も明らかです。
新しい価値観や新しいアイデアを相互に共有することで、新しい価値を共創する。そして、つながりを継続することで、それぞれの成長を刺激し合う。
そんなきっかけを提供できればと考えています。
第9回大会については、これから少しずつ進捗状況を共有していきたいと思います。
https://convention.jtbcom.co.jp/jahcm2027/index.html
皆様、来年もどうぞよろしくお願いいたします。
佐々木淳
