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切ってはならない、老夫婦のつながり

二人で一人。
心不全で療養中の奥様と、慢性肝疾患+脊椎術後のご主人。
それなりに平穏な日々を送られていたご夫婦。

ある時、訪問すると奥様がベッドの上で動けない状態になっていた。聞けば、ベランダで洗濯物を干そうとしていた時に転倒したのだという。なんとかベッドまでは移動したものの、それから強い痛みで動けなくなったのだ。
皮下血腫などはなかったが、エコーを実施すると左大腿骨に骨皮質の非連続性を認めた。大腿骨頚部骨折と診断、近くの病院に緊急受診していただいた。
もちろん入院・手術となったが、術後のリハビリのために入院は3か月に及んだ。
ご本人はなんとか歩ける状態にはなったものの、入院前に比べると歩行は不安定になっている。体重はマイナス10キロ。大きく痩せられていた。幸い認知機能や摂食嚥下機能の低下はなく、本日の訪問時、体重も少しずつ回復していることを確認できた。

入院関連機能障害。
高齢者は10日間の入院で7年分の老化に相当する骨格筋を喪失する。また入院中に譫妄を起こせば、平均で5年分の老化に相当する認知機能の低下が生じる。
入院による身体機能、認知機能の低下を入院関連機能障害(HAD)という。特に要介護高齢者は入院に伴う死亡率も高い。悠翔会の場合、入院を選択した患者の約24%が死亡退院となっている。
特に大腿骨骨折の場合、一定期間、ベッド上安静を求められる。術後の炎症に加え、その後のリハビリによるエネルギーの消耗を経口摂取で十分にカバーできないことも多い。歩行機能はなんとか維持されていても、栄養状態が低下して帰ってこられることは少なくない。
注意したいのは、入院関連機能障害が生じるのは「入院患者だけではない」ということだ。特に老々世帯の場合、片方が入院すると、入院しなかった方も身体機能・認知機能が低下することがある。

実は奥様の入院に伴い、ご主人も大きな影響を受けた。
一人でもやっていける、大丈夫だ、と支援者には伝えつつも、時間の経過とともにカーテンを開けずにベッドの上で過ごされることも増え、昼夜のリズムが消失した。訪問介護や訪問入浴などの外部からの訪問者に対して「不審者」と表現されるなど、せん妄と思われる意識の変容も見られた。食事は自分で食べられるといいつつ、喫食量や栄養量は大きく減少、歯磨きや更衣などの衛生管理も不十分なことが増えた。そして奥様の入院期間中、やはり体重が6キロも減少していた。
奥様が退院してきてから食事量は増加し、体重も少しずつ回復してきている。
現状認識の混乱なども消失し、以前のご主人に戻ってきている。ただ、やはり身体機能は低下し、これまではなんとか玄関まで自力で移動し、電動車いすをつかって外出もできていたのが、玄関までの移動、そして車いすへの移乗が難しい状況になった。ご夫婦まとめての栄養ケアをサポートしながら、訪問リハビリで生活力を少しずつ取り戻すお手伝いをしたほうがよいのかもしれない。

特に老々世帯の場合、片方が先に亡くなると、もう片方が後を追うように亡くなられるケースが少なくない。これは悲嘆に伴う精神的・霊的苦痛という側面だけではなく、心身の機能低下を「二人で一人前」という形で補完してきた共同体、相互依存の強い一体性があるのかもしれない。この「切っても切れない」というか「切ってはならない」つながりが片方のご逝去によって、あるいは入院によって一時的にでも断たれてしまうと、この共同体そのものが成立しなくなってしまう。
入院を防ぐ、できるだけ早期に退院してもらうことは、本人にとってのみならず、共に暮らすご家族・配偶者にとっても非常に重要なことなのだ。
特に老々世帯の場合には、在宅に残された側に対する支援を計画的・包括的に強化していくことの必要性を感じる。訪問看護の介入頻度を増やすことで、心身の機能低下を抑制することは、医療保険・介護保険の支出の抑制につながるのではないか。ここを制度面で(たとえば特別訪問看護指示などで)もう少しバックアップできるとよいのではないかとも思う。

インド帰国から3日目。
今日の足立区ランチは、気がつけばカレーだった。

佐々木淳

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