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それは制度か、それとも退化かー在宅医療24時間義務化への違和感

医学界新聞に在宅医療の当直機能共有について寄稿したのは、いまからちょうど10年前。
https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2016/PA03169_02
当時はまだ在宅医療が量的に不足していた。
その最大の参入障壁が24時間対応だった。
悠翔会は2011年、「救急診療部」を創設した。患者のフィードバックを確認しながら、緊急対応体制を佐々木個人による24時間対応から組織対応(当直医+診療アシスタントの院内待機)に徐々に切り替えていった。
翌年からは地域の先生方が在宅医療に無理なく取り組めるよう、連携する他法人に対しても時間外緊急対応の機能を共有した。

その後の2年間で、当直機能を共有するすべての連携先が在宅患者数、在宅看取り数を大幅に増やした。そして夜間対応を俗人化しない前提での在宅医療の提供体制が、診療の質の向上(時間外急変頻度の低下、緊急対応に対する患者満足度の改善)につながることを示した。

主治医と当直医が連続したケアが提供できるよう、連携グループで同じクラウド型電子カルテシステムを使用することを前提条件とし、時間外はリアルタイムで相互閲覧できるようにした。
当時は在宅医療用のクラウド型電子カルテシステムもなかったので、自分たちで作るところから始めた。連携カンファランスでシステムの不備を共有し、カイゼンを繰り返した。時間をかけて信頼できる当直担当医も少しずつ増やしていった。

15年間、試行錯誤しながら、患者にとっても、働く医療者にとっても最適な24時間体制を作ってきたのだ。
今回、機能強化型の要件として、勤務する常勤医の月4回以上の連続する24時間対応が義務化された。
何のために? 
緊急対応の持続可能性が確保され、看取りのアウトカムが改善し、そして患者満足度も向上しているのに。
この新しい要件の目的は、どうも「よりよい在宅医療を実現」ではなさそうだ。

今月示された診療報酬改定の疑義解釈には、当直代行会社を排除したいという厚労省の強い意図が見て取れる。
確かに、当直代行=医療そのものを提供するとしながら、保険収入からのマージンが配当に回るのは保険診療としては不適切だ。この保険診療のビジネス化に対する厚労省の強い意志は夜間往診サービスを封殺した2年前の診療報酬改定ではっきりと示されていたはず。そして今回の診療報酬改定でも、当直代行に対する厚労省の不快感は明確だった。しかしそれを挑発するかのようなSNS広告が流れてきて、まあこうなるのだろうなとは思っていた。

一方で、厚労省の新しい要件は明らかに時代に逆行している。複数常勤医師を優遇するのは、地域医療はインフラであるべき、という前提に基づくものではないのか。であるならば、その持続可能性を確保する手段として、当直体制を地域で共有することは推奨こそすれ、禁止される筋合いのものではないはずだ。
厚労省はこのDxとAIの時代に常勤医師による週1回以上の「連続する24時間対応」を義務化するのだという。これを退化と言わずしてなんというのか。
主治医にとって最も重要なのは夜間対応ではない。夜間に急変させないよう日中のケアの完成度を高めることだ。夜間に主治医が対応できなくても連続した診療が行える、患者・家族が不安を感じない、そんなチーム在宅医療を僕らは目指してきたのだ。
常勤医だけですべての夜間対応ニーズをカバーすることはできない。

悠翔会は15年間、時間をかけて育ててきた救急診療部という強力なバックアップシステムを活用しながら、患者さんたちに確実な24時間対応体制を提供するし、連携する医療機関の方々のサポートも揺るぎなく行っていく。
いま訪問看護のフレームワークで訪問発達支援サービスを「無料」で提供しようとするある上場企業の広告が話題になっている。医療保険の訪問看護、しかも小児なら自己負担なし。夜間往診サービスとホスピス型住宅を足して2で割ったような話だが、正直、そろそろ学んでほしい。この領域でも丁寧に仕事を重ねてきた人たちがいるはずなのだ。

佐々木淳

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