病院で“終わった機能”は、家で蘇ることがある

「回復期リハビリ病院への転院を検討するも、本人のリハビリ意欲が低く、嚥下機能が高度に低下していることから経口摂取が可能になる可能性も低いため断念」
年末年始に敗血症性ショック。人工呼吸管理は無事離脱したもの、心身の機能低下が遷延し、ほぼ寝たきり・摂食障害に。
胃ろうを造設され、そんな紹介状とともに自宅に帰ってこられました。
喉が渇いた。
コーラが飲みたい。
ご主人によると以前からコーラが大好きなのだそう。
とりあえず発語ははっきり、湿性のからみもないので、そのままRSST(反復唾液嚥下テスト)を実施、フルストロークの空嚥下を6秒おきにやって見せてくれました。舌の動きも問題なく、咳もはっきりと。
これはいけるのではないか。
冷蔵庫からコーラを拝借し、まずはコップで一口。
むせることなくゴクリと音を立てて飲み込めました。
ストローは吸い上げられるかな?そんな感じでお渡ししたところ、ゴクゴクゴクと3口も。短時間で100ml程度を上手に飲み込むことができました。
動脈血酸素飽和度をモニタリングしながら実施しましたが、99%から下がることはありませんでした。
嚥下機能が高度に低下している、経口摂取は無理と病院で診断されて退院してくる方、たくさんおられます。しかし、実は「嚥下機能がうまく発揮できていなかった」だけというケースは少なくありません。
特にせん妄や薬剤の影響、口腔内環境の悪化と不十分な口腔機能ケア、そして本人の意欲をうまく引き出せているか、というのも重要です。
在宅は本人にとってリラックスできる環境という強みがあります。家に帰れたからこそ次の目標(元気になりたい)を持つこともできます。医療ケア力は病棟よりは少ないですが、でも熱意とスキルでは病棟に負けない専門職がたくさんいます。
「回復できない、食べられない終末期の高齢者」から、「元気になりたい、食べる力が残っている高齢者」へ。対象の評価が変われば、QOLも生命予後も大きく変わります。
病院での診断は、入院病床での状態に対するもの。
病院での診断をそのまま受け入れるのではなく、病院からの情報を参照しつつ在宅という新しい環境で改めてアセスメントを更新する。
そこに在宅に「医療」が介在する意義があるのだとも思います。
次回はSST(サクサクテスト)を実施して、有形物の咀嚼と運搬の機能を評価してみる予定です。
佐々木淳