在宅医療はビジネスではない―診療報酬改定が突きつけた覚悟
診療報酬のビジネスモデル化は許さない。
厚労省の強い決意を感じる。
在宅医療の領域では、次の3つがインパクトが大きい。
●ホスピス型住宅
人数×回数で細かく区分された出来高で算定するか、包括型を選択するかの二者択一を迫られる。具体的な点数は出ていないが、おそらく大幅な減収になることは避けられず、投資家にとっての魅力も下がるだろう。訪問看護報酬を家賃のディスカウントに充てることも明確に禁止された。
●往診代行サービス
前回の診療報酬改定で撃墜された「時間外往診サービス」は「夜間当直代行サービス」と形を変えたが、その都度非常勤医をバッチするだけの当直代行は在宅医療の24時間対応として認められない可能性が出てきた。休日夜間の緊急対応は主治医機能としての連続性が必要、妥当な判断だとは思う。
●軽症×多数回訪問の在宅医療
前回の診療報酬改定では「施設中心に大規模に診療をしているクリニック」が一律40%減算と大幅(それでも倒産しないギリギリライン)に減算されたが、今回は居宅も含め「軽症患者を中心に複数回の訪問診療を提供しているクリニック」が実質的な減算の対象となりそうだ。
在宅緩和ケア充実診療所加算も見直しが言及された。ただ麻薬が使えればいい、看取れればというわけじゃない、重症患者もちゃんと診て、緊急時もきちんと対応する。
国が考える「本来あるべき在宅医療」とは何なのか。
シンプルなメッセージで伝わってきた。
ホスピス型住宅も夜間往診サービスも、いわゆる「制度ハック」だが、ニーズとデマンド、「疑似在宅」と「在宅」を明確に区別した点は評価したい。
しかし「ホームホスピス」を丁寧に運営してきた事業者や実態のある診診連携で24時間体制を構築してきた機能強化型在支診グループには、新たな業務負担が発生する。ビジネスやりたいなら制度外でやってほしい。正直迷惑と思っている人も多いだろう。
栄養に関しては大きく進化した。
高齢化に伴う疾病構造の変化、その中で病院の果たすべき役割の再整理と、予防(再入院予防)としての栄養ケアの重要性が強調され、それを支える多職種連携に対する評価も新設された。
●嚥下調整食
求められる手間とスキルは他の治療食よりも大きいにも関わらず、治療食(加算対象)には含まれていなかったが嚥下食が、治療食とは別建てで特食加算対象となった。これは高齢入院患者にとっても、高齢者をケアする急性期病院の給食部門にとってもインパクトが大きい。
●嚥下訓練を目的化しない
「摂食嚥下機能回復体制加算」の見直しにより、嚥下機能評価から、栄養・口腔・リハの三位一体のアプローチ、そして退院支援までが連続した一体的ケアとして再定義された。安易な食止めで摂食嚥下機能を低下させ、老衰の診断とともに地域に漂流してくる患者さんが減ることを願う。
●退院後の訪問栄養食事指導
特に高齢者は退院直後の再入院が多いが、入院前後の摂食機能の変化に家族介護者のキャパが追い付けないのが1つの要因となっている。退院直後に月4回まで管理栄養士が訪問支援することで、栄養状態や摂食状況に課題のある患者の再入院・在宅療養中断のリスクを下げることができる。
実は昨年12月、厚労省に栄養ケアに関する要望書を提出した。
在宅や施設での栄養支援・栄養治療を拡充することで脆弱性疾患の発症、入院・再入院・死亡のリスクを抑制できる、そのために特に退院直後・状態変化時・終末期の栄養ケアへのアクセスを改善すること、入院関連機能障害のリスクを低減するために特に低栄養・摂食嚥下障害に対する加算、給食費の増額をリクエストした。
秋野先生、川村先生に本会議・厚労委員会で取り上げていただき、医療法の附帯決議に明記されたことは大きな一歩だったと思う。
加えて、在宅時医学総合管理料の栄養ケアアセスメントの要件化、特別訪問看護指示に準ずる「特別訪問栄養食事指導(医療保険による一時的・迅速な管理栄養士の訪問)」の定義、訪問看護ステーション・地域包括支援センターへの管理栄養士の配置なども検討を進めていただきたいと思っていたが、こちらについては、地域での実践を通じてその有用性をエビデンスで示せるように頑張りたい。
医薬品ONSの適正利用も含め、議論のあった栄養ケア領域だが、病院から在宅に連続する支援の一大領域として今後より専門職や患者・家族の関心が高まっていくことを期待したい。
