ホスピス型住宅の主治医が、モラルのない「事業者の言うなり在宅医」に切り替わるだけ

訪問看護指示書に虚偽病名や過剰なサービスの必要性を記載するよう強要する。そして、それに従わなければ主治医を変更する。
日本在宅医療連合学会の在宅医を対象とした調査で、ホスピス型住宅で横行する不適切な現状が可視化されました。
また「ホスピス型」という名称には到底そぐわない、ケア力に課題のある施設が少なくないことも明らかになりました。
特に「個別のアセスメント」や「緩和ケア」「終末期ケア・看取り」の領域における評価が標準以下の施設が過半を占めています。これを「ホスピス」と呼ぶことには抵抗感しかありません。
一方、ホスピス型住宅がなければ居場所がなかったという方もいます。そして、もちろん中には素晴らしいホスピスケアを提供している施設もあります。僕の友人知人の中にも、他の事業者では対応できない重度の入居者に、その人たちの望む暮らしを実現しようと全力で努力をしている人たちがいます。
患者にとって最善の選択を共に考え、その実現に共に取り組む。彼らは患者さんにとって必要不可欠な存在だし、僕らにとっても理想の連携パートナーです。
しかし、上限なく提供できる訪問看護、誰もチェックしない訪問実績、請求すれば請求しただけ収入が得られる仕組みは、モラルのない経営者にとっては「打ち出の小槌」でもあります。中にはケアの質よりも訪問件数を重視したくなる人もいるのでしょう。そしてそんな人たちにとっては、患者中心・コンプライアンスにこだわる主治医は邪魔者以外の何物でもないのでしょう。
現在、中医協では、訪問看護指示書に複数回訪問の必要性を主治医に記載させることで過剰な訪問看護を抑制させようという議論が進んでいますが、そんなものではブレーキにならないことが明らかになったと思います。
その人にとって「最善のケア」をチームで提供する。
多くのホスピス型住宅は、この地域包括ケアシステムにおけるもっとも重要な「規範的統合」ができていません。そして、その異常に高い利益率で地域の看護師を吸収し、地域の医療介護提供体制そのものを破壊している、と指摘する声もあります。
ホスピス型住宅大手、PDハウスを運営するサンウェルズの苗代社長が(別件で)退任されるそうですが、同社の平均患者単価は年1400万円。大部分が健康保険・介護保険からの収入です。
普通に頑張っている医療介護福祉事業者から見てみれば、ちょっとありえない数字だと思います。
「ホスピス型住宅」という選択が地域あってもよい、僕はそう思います。しかし、そのためには事業体としての(事故報告などを含む)品質評価、そして合理的な報酬の仕組みが必要だと思います。
中医協・厚労省は、訪問看護指示書でお茶を濁さず、本質的な課題解決のためにもう少し知恵を絞ってほしいです。
このままだと、ホスピス型住宅の主治医が、モラルのない「事業者の言うなり在宅医」に切り替わるだけです。というか、すでに切り替えはだいぶ進んできていますが。
ホスピス型住宅における訪問看護と訪問診療の連携に関する実態調査報告(速報)