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台湾から見えた、在宅入院の未来 ― 標準化と個別化のバランスを考える ―

台湾の頼総統はハーバードで公衆衛生を学んだ内科医。
なんとAPAHACに登壇された。
来賓挨拶というよりは講演。
余先生たちのイニシアチブで始まった台湾の在宅入院、病院入院に遜色ないアウトカムと費用対効果(入院の1/3)に言及した上で、「台湾をhealthyに」と、在宅入院の推進と領域の拡大を宣言された。
国家元首が医療・公衆衛生の専門家というのは強い。総裁は「国民の健康が強い国家としての基盤」と、公共ヘルスケア領域への投資拡大を宣言された。

台湾ではすでに肺炎・尿路感染・蜂窩織炎と確定診断され、入院レベル」と判断された7000人が「在宅入院」し、その9割以上が自宅で治療を完遂、病院への「再入院」は4%程度に抑制されているという。
オーストラリアの在宅入院(Hospital in the Home HITH)からJames Pollard氏は、在宅入院のコストパフォーマンスの高さを認めた上で、「安いから使う」というのは適切ではないと釘を刺した。
在宅入院は、入院が必要なレベルの患者に、入院同等のレベルのケアが提供され、入院同等のアウトカムが保障され、入院に伴う害(せん妄や睡眠障害や入院関連機能障害など)がない、だからこそ推進されるべきなのだと。

また、診療報酬の設計についても、必要なケア提供量が確保されつつ、その質が担保される基準を慎重に検討すべきとした。
台湾でも、オーストラリアでも「安全な在宅入院」を確保するために「標準化」が前提に進められている。
診断も治療も定められたプロトコルに従って提供される。
またプロトコル単位の包括報酬なので、順調に治療が進み、短期間で治療が終了すれば1日あたりの診療報酬も上がる。
とてもスマートだ。

しかし、プロトコル化は治療の標準化という点では合理的だが、個別化が許されないという側面もある。
特に日本の在宅患者については、認知機能や代謝の低下した超高齢者も多いし、安全管理の側面からも全員に点滴抗菌薬というわけにもいかない。
会場でお会いした白惠文先生は、在宅入院のプロトコルに当てはめることで、最適な治療ができない患者に対して、個別にカスタマイズした「インフォーマルな在宅入院」を提供していると。ただこの場合には在宅入院としての報酬はない。

一方で高齢者施設では、通常の在宅医療の報酬は低く抑えられているが、在宅入院については居宅患者と同等なので、確定診断が頻発し、医学的管理もきちんとできないスタッフによって在宅入院が行われたりするケースもあると。
制度としての最適さ、のみならず、個々の患者から見た最適さをいかに担保するかも大きな課題だと思った。
とはいえ、全てを現場に委ねると、診療チーム・医療者ごとの能力や意欲によってケアの質に大きな差が出ることは避けられない。
標準化によって85点くらいのケアの質の最低ラインを保障しつつ、そこから上に一定の範囲でカスタマイズの余地を残すのがよいのか。
いずれにしても、慢性期ケアをベースに設計された日本の在宅医療の現状の報酬体系では、海外と同等レベルの在宅入院の持続可能な提供体制を確保するのは難しい。
患者、医療者、費用負担者、全員にとって有益な新しいフレームワークを提案したい。

佐々木淳

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