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5分のケアができない国

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ホスピス型住宅は、単にビジネスモデルとして優れていた(公的保険事業としてどうなのかという点は置いておいて)というだけではなく、「高頻度×短時間ケア」のニーズがあった、ということなのだと思う。
そして、これが既存の介護・看護サービスではカバーできなかった。

例えばパーキンソン病で胃瘻の患者さん。
1日3回の経管栄養はヘルパーさんでもできるかもしれない。しかし胃瘻からの薬剤投与は看護師にしか許されていない。もし、家族介護力が弱ければ、1日3回の訪問看護が必要になる。しかし、投薬だけなら30分も必要ない。5分で十分かもしれない。
こういうケースで、ホスピス型住宅の柔軟性は有意義だった。
ホスピス型住宅の問題は、この投薬のための「5分間の訪室」が、「30分の訪問看護」として請求されていた、ということなのだが、それはそれとして、こういうニーズがある、ということは確かなのだ。

では、ホスピス型住宅がなければ、このようなケアはできないのか。
そんなことはない。
特定施設(介護付き有料老人ホーム)には日中看護師が配置されている。しかし、特定施設には総量規制がかけられている。また、訪問看護費で稼げる分、家賃がディスカウントされるホスピス型住宅に比べて、患者家族の自己負担は大きくなる。
特養にも看護師は配置されている。要介護3以上+認知症という入所要件さえ満たせば、費用負担は特定施設よりもかなり軽くなる。ただ、ここは医療アクセスが悪い。訪問診療が入れないし、看護も必ずしも24時間ではない。
在宅で訪問看護と介護の組み合わせて対応することも理論的には可能だが、実際には厳しい。そもそもそこまで大量のリソースを一人の利用者のためにだけ割けるほど余裕がない。
看護小規模多機能などの地域密着型は、一時的なケアニーズの増大にも通いや泊りを使ってフレキシブルに対応できるし、最期まで自宅を中心としたケアを組むこともできる。しかし、その介護報酬は相対的に安く、重度者に対する対応余力を維持するのは難しい、というか黒字運営そのものも容易ではない。
いろんなサービスがあるが、いざ看取りも視野に最期までしっかり支えていけるか、というと、いずれのサービスも事業者の工夫と努力がなければギリギリで、本来(潜在的に)求められているケアニーズに応えきれていない、というのが実情なのだろう。

そして、そんな患者・家族の不全感を補うように、急速に普及したのがホスピス型住宅なのではないか。
ホスピス型住宅のビジネスモデルには構造的な問題があるし、それはそれで是正を進めてもらうしかないが、同時に、満たされてこなかったこれらのケアニーズにどう対応するかについても、対応を進めなければならないと思う。

香取さんにお声がけいただき、ホスピス型住宅について、共同通信の市川さん、メディヴァの村上さんたちと公開ディスカッションの機会をいただいた。
その中で僕が考えた課題は次の3つ。

【1】特定施設・特養の看護力強化
現状、24時間看護師配置し、医療対応力・看取り力を高めている特定施設がある。僕らの関与先でも、1施設で20人以上看取るところが複数ある。現状、特定施設における「看護」はケアの付随的存在であるところが多いが、ここが医療ケアをしっかり担うことができれば、難病でも終末期がんでもきちんと看ていくこととができる。
特養に関しては、とにかく医療アクセスが悪すぎる。この医療過疎地状態をまずは改善するために訪問診療の導入を認めるべきではないか。そして看護についても、夜間対応を含め、しっかりと医療ケアに対応できる体制を確保する。そしてそれに相応の評価をするべきだ。ホスピス型住宅で1か月90万円の訪問看護報酬であったことを考えると、その「財源」がないとは言えないのではないか。

【2】地域密着型の複合型サービスの強化
看護小規模多機能など、ケア対応力に加えて医療対応力も素晴らしい施設がある。通常のケアに加えて、一時的なニーズの増大にフレキシブルに・かつ最期まで対応できる。しかし、報酬が安すぎる。同じ要介護度でもグループホームよりも介護報酬が安いのはいかがなものか。ここが機能することで在宅生活継続の限界値は確実に上がる。それは社会コストの削減につながる。その分をきちんとサービスフィーにフィードバックすべきではないか。

【3】タスクシフト(特に看護→介護)
例えば、前述のパーキンソン病の事例でも、経管栄養は介護職でもできる。しかし、なぜか同じルートからの投薬はできない。というか、シートから錠剤を出すことすら許されていない。このような非合理的な縦割り規制はそろそろ撤廃すべきではないか。規制改革推進会議でも一度議論したが、「医行為だ」という理由で門前払いだったが、そもそも認知症のばあちゃんに一人でやらせる作業を、医行為として制限することが理解できない。
ホスピス型住宅が顕在化させたのは、短時間×高頻度ケアのニーズだけではない。その他のケアサービスの非合理的・非効率的な提供実態だ。そしてその原因は報酬含む制度設計や時代遅れの法規制(あるいは厚労省の通達)にある。

課題があることがわかっているなら、なんとかしなければならないと思う。

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