今年のクリスマス。

佐々木理事 2022年 12月29日 Facebook記事より

今年のクリスマス。

イブを含めた2日間で、645人がコロナで亡くなっています。

昨日は1日で415人が亡くなりました。

思えば一昨年の年末も感染拡大(第3波のピーク)、施設のクラスター対応などで大変でした。

特に高齢者や在宅医療介護専門職のワクチン接種がまだ始まっていなかったので本当にドキドキだった。それでも死者は今の4分の1でした。

第8波のピークをうかがうこの年末は、2年前とは違い、在宅患者も専門職も、5回のワクチン接種をほぼ完了しています。

それでも新型コロナに感染すると(僕の限定的な経験からですが)要介護高齢者は10人中4人は衰弱が加速(食事が摂れなくなる・寝たきりになる)、うち1人は在宅酸素(心不全増悪・誤嚥性肺炎併発なども含む)が必要な状況になります。6人は軽微な症状(発熱や咽頭痛のみ)で治癒します。

衰弱が加速した4人のうち2人もその後回復しますが、残る2人はそのまま衰弱が進行し、明らかに死期が早まる印象があります。コロナを乗り越えても、1~2カ月のうちに亡くなってしまう人が少なくありません。

インフルエンザでも感染を機に衰弱する人はいますが、ここまでではありません。

ワクチンのおかげで「コロナ肺炎」で亡くなる人は激減しましたが、高齢者にとってはいまだに脅威であることには変わりはありません。

12月下旬に入ってから、特に首都圏では高齢者施設で感染拡大が加速しているように感じます。仕事納めだったはずの昨日も、新たなクラスターが。

ケアチームの中にも感染者が増え、現場の支える力も限界点に達しつつあります。本日も複数の新規感染者。入院先を探すも、今日は一人も入院を受け入れてもらえませんでした。このまま感染拡大が続くと、かなり死亡者が増えるのではないかと懸念しています。

一方で、社会はどんどん「正常化」しています。新橋や新宿の賑わいはコロナ前と変わらず。狭い店にギュウギュウ詰めに人が入って、みんな楽しそうに大きな声で談笑しています。

先日、Twitterで「社会全体がコロナ死を許容している」と表現したところ、多数批判をいただきました。しかし、コロナ感染に対し慎重な行動を取る人が少なくなっているのは事実です。

惰性のような体温チェックとアクリル板を除けば、少なくとも、感染拡大をなんとかしなければという危機感はありません。

第8波は感染者数も死亡者数もおそらく過去最大。

しかし、聖なる夜の600人超の死者をNHKですら報道してくれませんでした。もはやこれがニュースにもならない「当たり前」の出来事、私たちの社会にとって許容範囲内だから、でしょうか。

僕個人は、これをよしとは思っていません。

だけど、この大きな流れは、おそらくもう変えることはできない。

今の政府も止めるつもりはないようです。ワクチン接種も自己判断、あとは医療と介護の現場の使命感に任せますよ。そんな感じでしょうか。

だから、脆弱な患者さんたちを守るために、しっかりとワクチンを打っておくこと。もし感染してしまったら、状況に応じて抗ウイルス薬を適時投与できるようにしておくこと。

そして入院はできない前提で心の準備をしておくこと。やれることをやるしかないと腹をくくっています。

コロナが上陸してからもうすぐ丸3年。どうすれば感染を防げるのか、知らない人はいないはずです。

それを日常生活の中で、感染拡大の状況に応じて実践していく。そんなことを学んできました。

もちろんゼロコロナはあり得ません。

どこまでの感染拡大を許容するのか=感染拡大を抑えるためにどこまで日常生活を制限することが合理的なのか。社会全体でその妥協点を探ってきたはずです。

1日で400人がコロナで死んでるけど、重症者が増えて病床が逼迫してるけど、医療職の感染で機能停止している病院もあるみたいだけど、救急車を呼んでもすぐには来てくれないみたいだけど、みんな普通に生活しているし、忘年会もやる。

それは、救急医療の一時的な機能低下も、感染した高齢者が亡くなるのも、ワクチン未接種者の重症化や後遺症も、その程度のリスクであれば許容できる、現在の社会活動を制限する必要はない、という暗黙の了解があるということでしょうか。

感染拡大も収束も、個々の判断の積み重ねが生み出すもの。多数が「これはまずい」と感じれば感染は収束するし、そうでなければ感染拡大は続く。

つまり、いまの状況は、社会全体の意思と言ってもいいのかもしれません。医療者が自分たちのリスク基準で社会を支配するな。この3年間、投げつけられてきた言葉です。

命を守る、医療を守るという優先順位がおかしい(経済と生活が上位にあるべき)と非難されたこともあります。

結果として日本では、法的拘束ではなく社会全体(個々の行動)に委ねられ、今があります。マスクの適時着用なども定着してきました。

いい形でソフトランディングできてきている、みんなそう思っています。僕もそう思っていました。先月までは。ほんとうにそうなのかな。

偏った世界で暮らしているから、そう感じるのかもしれません。でも、この違和感を少しだけ共有しておきたいと思いました。外食や忘年会・新年会をするなと言っているわけではありませんので念のため。年末にそぐわない話題で失礼しました。