コーヒーを淹れ忘れながら、在宅医療の未来を考える
「在宅患者をたくさん診たいなら、重症だけを診ろ」
「訪問診療する医者が、自ら24時間対応しろ」
今回の診療報酬改定。
特に在宅医療専門クリニックには、大きな2つのハードルが課される。
重症患者割合(重症患者+包括的支援加算対象者)が一定割合を超えなければ、医学総合管理料を減算する。また自ら24時間対応しないのであれば、機能強化型として認めない。
具体的な数字はまだ出ていないが、これらをクリアできない場合、診療報酬が大幅に失われるクリニックも出てくるはず。
前回の診療報酬改定では、施設を中心に診療している大規模在支診の診療報酬を一律40%削るという荒業が使われたが、今回はさらに要件が細かく厳しい。
いずれにしても「軽症患者を中心に月2回訪問診療+休日夜間は誰かに丸投げ」という在宅医療機関は、ビジネスとしての旨味のなくなった在宅医療を本気で継続するのか、あるいは縮小・閉業するのか、選択を迫られることになる。
でもまあ、これは予想された未来だ。
そして国の言い分もよくわかる。
老化や要介護が主たるプロブレムの軽症患者は、外来の延長線上で、連続性のある形で診られるべき。外来中心の診療所の多くはソロプラクティスの開業医、在宅医療の診療規模は小さいが、これはプライマリケアの一部として守るべき機能。
一方、診療規模の大きな「在宅医療特化クリニック」は、そんな地域の診療所が対応できない患者をカバーする。在宅緩和ケア、気管切開や人工呼吸器の管理、小児や神経難病など、医療依存度が高く、緊急対応の頻度も高いケースを担当する。
合理的な役割分担だし、そうあるだと思う。
そしてそれをルールにしようとすると、今回のような診療報酬改定になるのだろう。
少なくとも国は、「軽症患者を集めて過剰な訪問診療を提供している」「機能強化型とか言いながら、そのコアとなる24時間対応を株式会社に丸投げしている」という状況を快く思っていないのは明らかだ。
ただ、医師の働き方改革が進められる中、在宅医は自ら24時間対応せよ、というのは正直、時代に逆行していると思う。
重要なのは「主治医機能」が24時間対応できること。その場限りの担当医をマッチングして往診させる、というのはもちろん論外だが、そのクリニックの主治医機能を担う医師の一人として、患者に対して連続性のある診療、連続性のある対話(意思決定支援)ができているのであれば、「代診」は許容されるべきだ。
国には、「主治医自ら24時間対応」ではなく「主治医としての連続性のある診療を担保」という形で評価を見直してもらいたいと思う。
もちろん、在宅医療をやるのであれば、当然、24時間対応は経験すべきだと思うが、主治医としては深夜に駆けつけることよりも、そうなるリスクを最小限にするよう日頃からの健康管理(医学管理)をきちんと行うことのほうがより重要なはず。
かかりつけ医制度で先行する英国でも「かかりつけ医」ではなく「かかりつけクリニック」としての完結性が求められているし、日本でも入院や外来においても同様のはず。
安易な在宅医療に対する懲罰的な意味合いが強いのかもしれないが、であれば、診療報酬ではなく個別指導や監査で対応すべきではないか。
また「重症患者の割合」も、これはなかなか厳しい。
例えば、「重症」で算定しようと思うと、月2回以上の訪問診療が必要になる。パーキンソン病でも月1回訪問診療だと重症として算定できない。
また、この「患者」のカウント対象は、医学総合管理料を算定した患者(訪問診療を1回以上)に限られる。終末期がんの患者さんの場合、初診(往診)後、複数回の往診をして看取りまでしても、管理料が算定できない。
重症患者のカウントには、管理料算定患者のみならず1回以上の往診を行った患者もぜひ含んでほしいと思う。そうでないと、終末期がんなど経過の早い患者を中心に対応しているクリニックは、その「苦労」が過小評価されてしまう。
なんてことを考えながらファミマでコーヒーを買ったら、コーヒーを淹れるのを忘れてでてきちゃいました。
悠翔会は患者の重症度に関しては問題なさそうですが、24時間対応については、これまで法人として運営してきた方針(チームで主治医機能を発揮し、チームで24時間対応する)と異なります。
ここの整合性をどうとっていくのか、少し知恵を絞りたいと思います。
佐々木淳